給与計算の基本構造
給与計算の基本構造をもっとも簡単に表すと以下のようになります。
[総支給額]-[控除額]=[差引支給額]
給与は労働契約に基づいて支払われる労働の対価ですが、そのまま全額を支給すればよいというものではありません。所得税、住民税といった税金、健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料などの社会保険料については、 企集が給与から源泉徴収(天引き)して納付することが法律で定められています。従ってこれを「法定控除」といいます。
また、法定控除以外の項目でも、企業と従業員の代表が話し合って「労使協定」が結ばれていれば給与から控除(天引き)できます。法定控除以外の主な控除項目としては、社宅や寮の使用料、組合費、財形貯蓄、生命保険料、社員旅行の積立などが考えられます。これらは企業ごとに異なっているのが普通で、まったくない場合もあります。
給与計算の基本(1):総支給額はどうやって決まるのか
給与計算の基本となるのが「総支給額」です。これはいくつもの性質の違う給与が組み合わさったものといえます。その分類の仕方には以下のようなものがあります。
1)「基本給」と「諸手当」
基本給はまさに給与の中心であり、年齢や勤続年数、経験、能力などによって各企業の給与規定に定められています。基本給をさらに「本給」「役割給」「職能給」などに分けている場合もあります。
手当ては、役職手当・家族手当・営業手当・住宅手当・時間外労働手当・深夜労働手当・休日労働手当・通勤手当など、基本給を補う役割を持つ給与です。これも企業によって名目や額は異なり、給与規程に定められています。
2):「基準内給与」と「基準外給与」
基準内給与とは、就業規則で定められた所定労働時間分の労働をした場合に支払われる給与です、基本給のすべてと、役職手当・営業手当・住宅手当など労働時間に関わりなく支払われる諸手当がこれに当たります。
基準外給与とは、主に所定労働時間以外に働いた場合に支給される、時間外勤務手当・休日出勤手当・深夜手当などの手当がこれに該当します。
3):「固定的給与」と「非固定的給与」
固定的給与は、勤務時間や営業成績などによって変動することなく一定額が支給される給与です。基本給、役職手当・家族手当・住宅手当などの諸手当がこれに当たります。非固定的給与は、残業や休日出勤、あるいは営業成績などにより月毎の支給額が変動する給与です。時間外勤務手当・休日勤務手当などの他、出来高給(歩合給)やインセンティブなどがこれに相当します。
◎ 固定的給与 勤務時間や営業成績などによって変動することなく一定額が支給される給与 ・本給 ・職能給 ・役職手当 ・役割給 ・資格手当 ・家族手当 ・住宅手当 他
◎ 非固定的給与 残業や休日出勤、あるいは営業成績などにより月毎の支給額が変動する給与 ・精勤手当 ・皆勤手当 ・営業手当 ・時間外・休日・深夜労働手当 ・宿日直手当 他
総支給額を計算するには、従業員一人一人について給与・手当支給の裏付けとなるデータを確認し、必要な場合には所定の計算を行い、それらを合計します。
●人事データをもとに支給する給与(固定的給与) 基本給や役職手当・家族手当・通勤手当などです。 昇格・降格、異動、家族の増減、転居などによって支給額が変動することがあります。
●勤怠データをもとに支給する給与(非固定的給与) 残業時間、休日出勤日数などによって時間外勤務手当、休日出勤手当などを計算します。また、欠勤・遅刻・早退があった場合は、それによる控除が発生するかどうかを確認します。
●業績データをもとに支給する給与(非固定的給与) 出来高給(歩合給)やインセンティブなどは営業成績・業務成績に応じて計算されます。